自死遺族支援ネットワーク・大分(略称 SUNSSO)のコラム

コラム vol.1 「免責期間内の生命保険金,簡単にあきらめないで」(弁護士 藤崎千依 さん

〔2013年10月28日寄稿〕

弁護士 藤崎千依 さん

Q1 免責期間って何ですか?

保険法51条1号(旧商法680条1項1号)は,「被保険者が自殺をしたとき」は,保険者の保険金の支払義務は免責されると定めています。
一方,生命保険会社の保険契約約款では,免責期間を責任開始日(契約日または契約復活日)の3年以内に制限しています。
かつては1年あるいは2年としていましたが,現在は各社とも3年です。
つまり,保険契約日から3年経過した後に自殺した場合には,死亡保険金を払ってもらえるけれど,3年以内なら保険会社は死亡保険金を払わなくてもよい(保険会社は,保険金の支払いを免責される。)ということになります。
これを免責期間と呼んでいます。
このため,生命保険の契約をした日から3年以内に家族が自殺してしまったケースでは,保険会社に保険金の支払を断られ,諦めてしまう遺族の方が多いのです。
あるいは,初めから3年以内の自殺だからと請求さえもなさらない方もいらっしゃいます。

Q2 免責期間内の自殺だと本当に保険金は払ってもらえないのですか?

実は,そうではないのです。
保険法(旧商法)及び約款に規定する自殺は,「被保険者が自分の生命を絶つことを意識し,これを目的として死亡の結果を招く行為,即ち,被保険者の自由な意思決定に基づきなされた自殺」に限られます。
ちょっと難しいかもしれませんが,つまり,自分が自殺したらどうなるかということを十分に理解し,冷静な判断能力を持って,自殺しようと決意した上で自殺した場合に限られるということです。
自殺する方の多くは,ショックな出来事や大きな悩み事を抱えて,精神的に病んだ状態となり,うつ病などの精神疾患を発症してしまい,冷静な判断能力を失って自殺に追い込まれてしまっています。
そのような方々の場合,「自由な意思決定」に基づいて自殺したとは言えません。

Q3 実際に免責期間でも死亡保険金が支払われているケースはあるのですか?

大正5年2月12日の大審院の判例では,「死亡の結果が,精神病その他の原因による精神障害中における動作に起因し,被保険者が生命を絶とうとする意思決定によらない場合は,『自殺』に該当しない。」としています。
精神障害発症中の自殺が被保険者の自由な意思決定によりなされたのか否かが,裁判で争われ,敗訴した事案もありますが,勝訴事案も複数存在します(大分地裁判決平成17年9月8日判例時報1935号158頁,奈良地裁判決平成22年8月27日判例タイムズ1341号210頁等)。

Q4 裁判をしないと払ってもらえないのですか?

裁判所の判断は,別れてはいますが,精神障害発症後の自殺であることを証明する精神科医の意見書等の証拠を提出し,弁護士が意見書をつけて保険金を請求することにより,保険会社が任意に保険金を支払ってくれる場合もあります。
本来,身体の病気が原因となって死亡する場合であっても精神障害が原因となって死亡する場合であっても,病気が原因で死亡したのであれば,そのことで保険金の支払いにあたって,別の扱いを受けるべきではないのです。
免責期間内の自殺だからと簡単にあきらめてしまわず,弁護士に相談し,保険金請求をすることをぜひ考えてみてください。